病院には原則年1回、保健所などの職員がその医療機関の構造設備、衛生状態、医薬人の管理状態などを調べ、不備があれば指摘する「医療監視(立入り検査)」が行われます。2000年代になって、医療安全対策や院内感染対策も項目に加わりましたが、通常は医療の中身を調べるわけではなく、外形的な項目のチェックを行います。
この立入り検査の際、重要なポイントとなるのは病院のスタッフの人数です。医師、看護職員、薬剤師などは、適正な医療水準の確保するため、医療法施行規則で患者数に応じた「標準数」が厳格に定められています。
一般病床では患者16人につき医師1人、患者3人につき看護職員1人など、前年度の平均患者数から、外来を含めた病院全体の必要数を計算します。スタッフの数は、フルタイムの半分の時間働くパートは0.5人とするなど、常勤換算方式を用いて計算します。
標準数を見たなさない場合を「標欠」といいます。最低基準を割っている場合、すぐに診療停止になるわけではなく、まず改善指導が行われます。以前はどれだけスタッフが不足していも行政処分は行われませんでしたが、現在は標準数の半分以下の常態が2年を超えた場合、改善命令や業務停止命令を出せるようになりました。
もう一つは、入院料など診療報酬の減額です。こちらは病院の経営に直結するため、実際に働いていない架空職員を書類上にでっち上げて水増し報告する不正が頻繁に発覚しています。抜き打ち検査を行わない行政の姿勢が甘いことも不正が無くならない原因の一つです。医療法の基準とは別に、看護師の数を水増しして実際より高いランクの入院基本料を得る行為もあります。
2002年には、大学の医師らが病院に名前を貸して報酬を受け取る「名義貸し」が全国的に問題となり、厚生労働省はチェックの強化を求めました。新医師臨床研修制度の導入後、全国の病院では、常勤医の募集は勿論、非常勤・アルバイトの求人募集を盛んに行って人材確保に努めています。
医師不足の「標欠病院」は結構多かったのですが、こうした医療機関の努力が実り、医師数の標準数を充足した施設の割合は年々高まっており、2008年度には90%近くにまでなりました。ただし、近畿の95%に対し、北海道・東北は73%台にとどまっており、医師の大都市を背景とした、著しい地域格差がみられます。スタッフ不足の病院は、医療の質が下がるので、患者側も注意が必要となります。